~ストーリー~
満期で出所の模範囚。だれが呼んだか名は与太郎。
娑婆に放たれ向かった先は、人生うずまく町の寄席。
昭和最後の大名人・八雲がムショで演った「死神」が忘れられず、
生きる道は噺家と心に決めておりました。
弟子など取らぬ八雲師匠。
惚れて泣きつく与太郎やいかに……!?
昭和元禄落語心中・与太郎放浪篇、いざ幕開け!!
(コミックス帯より引用)
(C)Haruko Kumota 2011帯にも書かれている通り、評判が良いという事で購入。
1巻表紙の地味さもあり(失礼すみません)
期待感か高まらないまま読み始めましたが、訂正します・・・
じわりじわりと面白いです。褒めています。
爆発的な面白さとは違って
読み込んでいくうちにジワジワと尻上がりに味わいが出てくる、そんな感覚です。
「大先生、オイラはアンタに一目惚れしたんだ//∇//」刑務所で見た落語に心奪われた青年が刑務所を出所後、
弟子をとらないことで有名な噺家・八雲のもとを直接訪れ
弟子入り志願を直談判。
八
「お前(おまい)さん、帰るトコロがないのかえ?」与
「ぐう・・・(/ д; )」八
「与太郎、ぐずぐずしてねぇで さっさと乗んな」与
「うは
」なんの気まぐれか、八雲がこの青年を
与太郎(←馬鹿でマヌケな男の代名詞でもある名称)と名付けて
一番弟子にしたところから物語はスタート。
(以下、ネタバレ感想です)
落語を演りたい与太郎、
しかし与太郎が落語を演ることを疎んじる八雲師匠、
そして八雲を憎む小夏(八雲の親友である助六の忘れ形見)。
共にひとつ屋根の下で暮らすキャラクターたちの落語にまつわる人間模様に
ハラハラ&ワクワクする。
「アイツは自分の芸の残そうなんざ全然考えちゃいない。
言ってたんだよ、落語と心中するんだって」自分の落語を継承するつもりのない八雲に苛立ちを露わにする小夏は大の落語好き。
落語好き、と一言で片付けてはいけない、落語名人だった父親を幼い頃に亡くしたことから
父親への思慕があり、また父親の落語を絶やしたくないとも。
また父親が亡くなった原因は八雲にあると思い込んでいることから、
育て親である八雲を憎んでおり。
八雲と小夏はとても複雑な関係性ですね。
与太郎を膝枕する八雲の図などなど、何となくBL的な匂ひが醸し出されているのも
BL作家様ならでは&BLファン読者へのサービスも感じられる。
また、演芸評論家アマケンさんといい、京都の萬月さんといい、
八雲師匠を恋慕う(!?)ような中性的なキャラクターも個性的。
とにかくこの与太郎というキャラの楽天的・楽観的・天真爛漫さは
この物語のムードメーカー。
喜怒哀楽の激しさ(怒の部分は見かけないが)が大変可愛らしい。
私の中ではすっかり与太郎CVマモボイスで脳内変換されています。八雲の一言一言にベソかいたり喜んだり一喜一憂する与太郎の姿が微笑ましく。また、ドSな小夏アネさんからバカと言われて
「バカって言われた!!きゃっ☆」与 太 郎 は M 男 確 定 (笑)助六の死をきっかけに八雲は自分の芸を継承させまいと思っていた八雲師匠も
次第に与太郎のコミカルさが八雲の心を動かし与太郎を本格的に弟子に。
そんな時、
「なあ強次?お前 落語やってんだってな。ハハ、くだらねぇ!」与太郎(本名:強次。実は元ヤクザだった)に罪をなすりつけて投獄させたヤクザのアニキ登場し
与太郎に再び罪をなすりつけて投獄させようと恐喝!?
八雲の計らいもあり、アニキに落語の魅力を伝えるべく、アニキを楽しませようと、
客を笑わせようと、そして自分も楽しもうと
噺を披露し観客を沸かせた与太郎のその噺ぶりはまるで助六のごとく。
こんな与太郎に助六と同じ魂・波長を感じたから八雲は1巻冒頭で与太郎を拾ったのかもしれません。
小夏も物語の中で落語の下火について危惧していますが
確かに噺家(落語家)が落語をしている姿をテレビなどで見る機会は今では大変少なく
(バラエティ番組に出演している姿は良く見かけますが)
最近の世代には特に馴染みが薄いのが現状。
そんな中、最近では落語をテーマにしたアニメ「じょしらく」が
風刺的な内容で話題となっており(あれはなかなか際どくて視聴していてハラハラします・笑)
近年また落語ブームの動きがあるのか否か。
「こんなもん(落語)がなくなっちまうのは 悲しいよなあ」この与太郎の言葉がこの作品の核になっているのでしょう。


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